Bloom of Hedge

自作小説の更新雑記や読書感想・日常メモなど。 拍手お礼・コメントレスは「続きを読む」を押して下さい。

2009/11/05

新連載プレ企画(?)『R.I.P.』SSS

ほぼ日刊絵里衣新聞へようこそ(ただし期間限定)。



下書き終了記念(?)としまして、『R.I.P.』の掌編を書いてみました。
『WORKAHOLIC,~』最終話の二週間後、という設定です。
ラブラブというより、ただのバカップルなんですが(笑)、『R.I.P.2』がかなり重い内容なので、こちらでなごんでいただければ幸いです。
微妙に大人向けなので(『WORKAHOLIC,~』のVol.9程度)、苦手な方はご注意くださいね。



あと、いつも思いつきでSSを書くので、ちょっとここらで時系列整理を兼ねてタイトルを並べてみました。

1)『予感』
2)『A HARD DAY'S NIGHT 』
3)『Girls Just Want to Have Fun?』
4)『復活の代償』
5)『無印R.I.P.』
6)『WORKAHOLIC,LOVEHOLIC』Finalまで
7)↑のvol.3と4の間で『バトン』
8)今回の                    ←new!
9)『WORKAHOLIC,~』番外編
10)『砂時計は戻せない』
11)新連載予定『R.I.P.2(仮題)』

ややこしや~。
そのうち、目次ページでも書いておきます。


それでは脱線しましたが、「続きを読む」からどうぞ。


「ねえ、羽柴さん」
「なんだ?」
 あたしがスーツの袖を引っ張ると、少し先を歩いていた羽柴さんが足を止め、こちらを向いた。そこではじめて「ああ、近いな」と思った。
 これまで仕事中に何度も隣にいたけど、今日ほど距離が近いと感じたことはなかった。
 物理的な距離は、ほとんど大差ない。それでも近いと思うのは、きっとふたりの気持ちの距離だ。今までよりずっと、近づいたんだから。
 そう考えると、ちょっと気恥ずかしかった。
 だって、今日ははじめてふたりきりで会った、いわゆる『初デート』だから。といっても、仕事帰りに待ち合わせして一緒に食事をした程度だから、まだ数時間しか経ってないけど。
 あたしはわざと甘えるような口調で言ってみた。
「手、つないで」
 はい、と手を差し出すと、彼は急に難しい顔になった。
 別に怒っているわけじゃない、照れているだけ。案の定、ぎくしゃくしたようすで手を握ってくれた。
 大きくてがっしりした、あったかい手。
 ずっと見てきたこの手に包まれる日が来るなんて、まだ夢を見てるみたい。
 でも、羽柴さんは相変わらずそっけない態度のままだ。そりゃあ、以前ほどではないけど、まだ完全に心を開いてくれていないみたい。
 それが、ちょっとさみしかった。
 だから、もう少し甘えてみた。
「あんまり先に行っちゃいや。もっとゆっくり歩いて」
 本当は、気を抜くと敬語が出てしまいそうだった。そうならないようにも、オーバーなくらい女っぽい話し方にしてみる。
 すると羽柴さんは、目に見えて赤くなった。
「……悪い、これから気を付ける」
 ごにょごにょとつぶやくと、また前を向いて歩きはじめた。
 今度は、ずっと遅いスピードで。
 はじめてふたりで迎えた朝を思い出す。
 あれからもう、二週間も経っていた。
 これまで毎日と言っていいほど顔を合わせてきたから、二週間も会えないなんて気が遠くなりそうだった。
 だから今日、久しぶりに会えたときはすごくうれしかったのに、羽柴さんは相変わらずの態度だもの。
 あたしばっかりが浮かれてるみたいで、ちょっと悔しい。
 ……でも、これから歩み寄っていけばいいかな。



 部屋に戻り、コートとジャケットを脱いでポールハンガーにかける。
「羽柴さんのもかけとくね」
「ああ」
 羽柴さんの分のコートとジャケットをあずかり、ハンガーに通した。ずっしりと重い。
 ふと見ると、彼は襟元に指をかけ、ネクタイをゆるめている。本人にすればごく日常的なその動作が、あたしにはたまらなくセクシーなものだった。
 たぶん、オンとオフの切り替えの瞬間だからだろう。ネクタイとともに、張りつめていた気もゆるめる。その無防備なさまを自分にだけ見せてくれていると思うと胸が騒ぐのかも。
「なに?」
 あたしがガン見しているのに気付いたのか、羽柴さんが怪訝な顔をする。
「……なんでもない。座ってて、今コーヒー入れてくるね」
 そうごまかすと、そそくさとキッチンへと逃げた。まだドキドキしている。
 ──やっぱり“する”のかな……
 あの夜を思い出す。
 いつもの無愛想さからは想像できないほどの激しさで求められた。
 付き合ってるんだから別にいいんだ、と自分に言い聞かせるけど、落ち着かない。
 実は、早々に身体を許してしまったことを、あたしは少なからず後悔していた。ゆっくりと時間をかけて関係を深めていくべきだったのに、なんだか順序が逆になってしまった。
 きっと、もう限界だったんだろう。
 一年間仕事仲間として接してきたけど、もう気持ちの余裕がなくなってきていて、一刻も早くその関係から抜け出したかったんだ。
 それでも、軽い女だと思われてしまったのではと、この二週間煩悶していたのも事実だった。



 新調したおそろいのマグカップをトレイに載せて部屋に戻ると、羽柴さんはソファに投げ出していた女性誌を眺めていた。
 あたしの顔を見ると、ちょっとあわてたように雑誌を閉じて、
「こういうのも読むんだな、と思って」
と、言った。まるで言い訳してるみたいでおかしかった。
「参考程度にね。はい」
「サンキュ」
 カップを目の前に置くと、礼を言って手を伸ばす。
 そういえば、仕事中はほとんどお礼を言われたことがなかったな。だいたい「悪いな」だったっけ。
 何気ない一言でも、距離が縮まった実感が沸く。それがまたうれしかった。
 隣に腰を下ろし、コーヒーに息を吹きかけて冷ましていると「祐希」と名を呼ばれ、あたしは驚いてカップをテーブルに戻してしまった。
 羽柴さんの方に向きなおる。彼もまたカップを戻してこちらを見ていた。
 急に恥ずかしくなったあたしは、「お酒の方がよかった? ビールも買ってあるけど……」と、席を立とうとした。
 すると、
「いいから、座ってろよ」
と、手首をつかんで引き戻された。
「……ここ、あたしの家だもん」
 唇を尖らせてみせると、彼はちょっと笑った。
 その笑顔に、この二週間煮詰まっていたいろんなわだかまりが、すうっと昇華していくのが分かる。
「二週間ってさ、こんなに長かったんだな」
「……うん」
「こんなに長い間顔合わせないのって、はじめてだったな」
「……うん」
 彼も、そう思ってたんだ。
 よかった、あたしだけじゃなくて。
 そう安堵したとき、ゆっくりと顔が近づいてきた。
 二、三度軽く触れ合ったかと思うと、いきなり肩をつかんでソファの背に押しつけられ、深く口づけられる。
 タバコの味のする荒いキスをなんとか受け止めていると、肩にあった手がいつの間にか胸元を探っていた。意外なほどの力強さと性急さに、つい彼の手を押しとどめてしまう。
 すると、弾かれたように羽柴さんが身を起こした。
「悪い、いやだったか?」
 真剣な顔で言われてしまい、逆にあたしの方がびっくりした。
「ううん。でも、先にシャワー浴びたいから……」
「あ……そっか」
 目に見えてほっとしたようすの彼が、ぼそっとつぶやいた。
「その……。こないだ、ちょっと強引すぎたかなって思ってたから……」
 あれ。
 彼もそんなふうに思っていたなんて。てっきり、あたしだけだとばかり。
 やっぱり、ちゃんと口にしないと分からないな。
 あたしはくすっと笑い、わざと下からのぞき込むようにしてみた。
 じっと上目遣いで見つめると、とがった喉仏が上下に動くのが分かった。
 これは、相当きてるな。
 やっぱり羽柴さんも、男なんだ。
「なあ……。やっぱ、シャワーは後でもいいだろ?」
「やあよ、待っててね」
 あたしはさらりとかわし、着替えを持って部屋から出た。
 よかった、あたしだけじゃなくて。結局はお互いさまだったってことよね。
 なんだかおかしくなって、あたしは鏡の前でふたたび笑ってしまった。



END


以前リクエストいただいていた『無印R.I.P.』のVol.12に書いた「不発キスのときの羽柴の心境を、彼の口から聞きたい」というものなんですが、書きかけて気付いたことがありました。
↑を確かめるためには、いやでも彩の一件のことを持ち出さないといけなくなり、それは羽柴に苦痛を思い出させるという結果になり、萌え話どころじゃなくなるので、思い切ってやめて違う話にしました。

リクエストいただいた方、すみませんでした。

≪ 『R.I.P.Ⅱ -第二章-』 連載開始ホーム人物相関図 ≫

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花魁・女刑事・昭和初期・ヴィクトリア朝などをこよなく愛す。

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